先週の土曜日の午後、父から携帯に電話がありました。
「煙を吸い込んでお母さんと一緒に救急車で病院に運ばれた」
慌てている様子で話の要点がよくわかりません。
何とか事情を聞き出すと、両親が住んでいる集合住宅の上の階で
火事があり、その煙を吸い込んだらしいのです。
とにかく急いで両親の運ばれた病院へ駆けつけました。
病院へ着くと、二人とも既に診察は終わっていて、
私が迎えに来るのを待っていました。
父はわりと元気でしたが、母はとにかく落ち込んでいます。
煙を吸い込んだことによる影響は二人とも心配がないということで
とりあえずホッとした自分でした。
詳しく話を聞くと、両親が住んでいる2Fの真上の3Fの部屋が火事で
逃げる際にドアを開けた途端 真っ黒い煙が部屋の中に
すごい勢いで入ってきたそうです。
10台ぐらいの消防車と救急車が駆けつけ、
消火活動している傍ら、二人は病院へ運ばれたとのこと。
病院から戻ると、既に鎮火していましたが数台の消防車は残っていて、
現場は立入禁止のテープが張られていました。
周りには何とも言えない焦げた匂いが漂い、
真っ黒なすすと水が混じり合っています。
恐る恐る玄関のドアを開けて部屋に入ってみると・・・
数時間前まで両親が過ごしていた部屋の中は
ビニールシートで覆われ、床や畳の上には水がたまり、
天井からは大量の水が流れていました。
予想はしていましたが、かなり悲惨な状況でした。
部屋の中に土足で入ることに躊躇してしまいましたが、
とても靴を脱いで入れる状況ではなく、
それが一番最初に感じた悲しい現実でした。
幸いにも火災からは免れましたが、母の落胆振りは大きかったです。
消防署の方や管理組合の方が代わる代わる訪れる中、
一人の女性が玄関から部屋をのぞいていました。
何か言いたげなその女性は両親の真下に住む1Fの方でした。
「○○さん宅から落ちてくる水がとにかく凄いので何とかして欲しい。
このままじゃ電気製品もタンスも全部だめになる」
この女性は信じられないことを両親に向かって言い放ったんです。
消防署の方もこの言葉には呆れていました。
「この部屋の状況を見てわかりませんか?おたくよりも、
きっと両親の部屋の方がひどい状況のはずです」
一瞬にして切れてしまった私はもっとひどい言い方をしたと思います。
あの場であの状況でよくあんな言い方ができるものだと、
この女性に対しては今でも怒りが収まりません。
とりあえず、二人を我が家へ連れて行き、
その後、妻と新しい布団や着替えなどを買いに行き、
二人が常用している薬や頼まれたものを取りに現場へ戻ったのですが、
ビニールシートに落ちる水の音は大雨のように響き、
垂れ落ちる水は黒っぽい色に変わっていました。
くよくよしていても仕方ない。両親もそう思ったのか、
3人の孫に囲まれての夕飯では元気を少し取り戻していました。
そんな中 私が嬉しかったのは長女の母への気遣いでした。
お風呂のシャワーの使い方などを説明していたのですが、
やはり少し元気のない母に対して、
「おばあちゃん 私が一緒にお風呂に入ってあげるよ」と
私からしてみれば信じられない優しさを見せたのです。
「○○が背中を流してくれた」と母は本当に嬉しそうに話していました^^
昨日、兄二人も仕事を休んで皆で少し片づけをしました。
リビングで使っていたテレビはダメになりましたが、
父が大切にしていたパソコンは無事で水を浴びなかったタンスもあり、
洋服や布団なども思っていたよりは無事でした。
片づけをしている最中に火元となった3Fに住んでいた方が
お詫びの挨拶にみえました。
このお宅には80歳は過ぎていらっしゃる高齢のお母さんと
息子さん夫婦が住んでいました。
当日は三人とも在宅で石油ストーブを倒して火事になったらしいです。
慌てて息子さんが座布団等で消そうとしたらしいですが、
それ以上に火の回りが早かったそうです。
息子さん夫婦が未だ入院していらっしゃる中、
高齢の腰の曲がったお母さんがお詫びにやってきたのです。
私の母は○○さんの姿を見つけるとすぐに駆け寄り、
「○○さん ご無事で何よりよかったです」と抱き合って泣いていました。
その光景を見ながら、責めるのではなく、
現状を受け入れ、相手の無事をただ喜び、涙している母に感動しました。
命あってこそです。父も兄二人も妻も皆泣いていました。
まだしばらくは両親との共同生活は続きます。
多少の不便はあっても孫に囲まれた生活は結構快適なようです^^
自分達のお爺ちゃん、お婆ちゃんには違いありませんが、
お年寄りを大切にするという気持ちは普段のこういった生活から
自然に生まれてくるものだと娘達もいい経験になるでしょう。
マッチ一本火事のもと、皆さん火の元には十分気をつけましょう!!
最近のコメント